親の付き合いを把握せよ

  •  『隣組』というものの存在を知っているだろうか。北関東の山村を例にとると、およそ12〜13軒がまとまって隣組という組織をつくり、祭りをはじめとする地域の冠婚葬祭のすべてをとりしきる。とくに葬式では、隣組の結束力とノウハウがいかんなく発揮され、男衆は儀式の一切を、女衆は遺族の食事から遠来の接待まで行う。また、いくつかの隣組が集合して行われる地域の会合では衛生委員、消防、婦人部、育成会からなんとPTAの役員まで選出してしまうのだ。
     都会で生まれ育った人には信じられないかもしれないが、隣組的な付き合いは、ここまで濃密ではなくても地方に暮らす親の世代まではそうめずらしいことではない。わざわざ地元にUターンしてまで引き継いでほしいとは言わないまでも、こうした地域の付き合いの伝統や役割は、多少なりとも受け継いでほしいと考えている親は多い。「息子は商社マンでニューヨーク暮らしだが、祭り総代だけは絶対に引き継がせる」(山林・59歳)という声もあった。
     もちろん、都会にも町内会や子ども会、老人会、マンション自治会といったゆるやかな組織はあるが、こちらにはとくに引き継ぎを要するような伝統や役割はないものの、ひとたび地域の利害が絡むような問題が起きれば、固く結束して住民運動の母体になったりもする。
     たとえば東京郊外の住宅地では、バス路線誘致をめぐって地域の開発業者やバス会社と25年間もモメ続けているため、メンバー親子の代替わりもみられた。こういう場合は、「代替わりしたから関係ない」とはいかないのだ。
     また全国には7つの市町村を除くとほとんどの自治体に住民参加型の消防団が存在する。人数は減りつつあるものの、約97万人が地域で起こった消火活動に参加しており、そんな組織も親から子へと引き継ぐもののひとつといえるだろう。
     地方でも都会でも、地域における親の関わりや役割を知るというのは案外おもしろいものだ。ついでに付き合いの『親密度』や『好き嫌い』なども聞いておけば何かと役に立つ。

親戚付き合いノウハウ

  •  夏休みや冬休みに毎年遊びに行っていた山の親戚、海の親戚。子どもの頃は何も考えずに遊びほうけていたものだが、親がそれなりに気を配り、親密な付き合いができあがっていたからこそ可能だったことだ。
    とくに実家の兄嫁やその子ども、小姑、近隣の本家なんてところも、日頃から物質的な心配りをしていたに違いない。
     親戚付き合いとして考えられるのは、各種法事、入学、就職、結婚祝い、盆暮の贈物まで内容はいろいろあるが、義理を欠かせないのがやっぱり法事。昔は隠居した親に代わって子どもが出席することもあったが、現在の『還暦拒否60歳現役宣言』の親たちは当然隠居などするわけもなく、したがって親戚付き合いを子どもに譲るなんて発想はハナからないはずだ。
     子どもも自分たちの結婚で新しい親戚付き合いも広がるから、いつまでも親の親戚にこだわってはいられないが『法事』はある程度の継続が必要。親戚付き合いには結構形式ばった序列があって、親の代役だったりそれほど親しく付き合っていない場合でも、法事の席では上座に座らされるなんてこともある。こうした親戚付き合いは面倒とは思うが、とあるアンケート調査でも「子どもに引き継いでおきたいこと」として、「親戚との関係」(元会社員・62歳)、「家系と氏名の由来について」(会社員・58歳)といった回答は目立った。自分も年をとれば血縁というのを案外大切に感じるようになるかもしれない。
     したがって、親が死亡したり病気で出席できないような場合でも親戚から法事の通知がきたら、なるべく出席するのが望ましいと考えられる。
     しかしいくら近い親戚だとしても、たとえば新興宗教にハマっていてことあるごとに入信させようとする叔父とか、とかく金銭的な問題に巻き込もうとするいとこなど、なるべく疎遠にしておきたい親戚もいる。こんな場合は、出席はしなくても供物料を送るというのが無難なところ。
     実際に親がいなくなった後、親の代の親戚とはどの範囲で付き合っていくかだが、祖父母と親の兄弟が最低限の目安。そのほかは親しさの度合いで決めていくしかない。とくに尊敬していた大叔母とか仲良しだったいとこなら、法事などはなるべく出席したほうがよいし、そうでもない親戚なら、正式の通知がこなければとくに出席することはない。